高岡、能作本社を訪ねて(2)
2017.08.13
「能作」というものづくりから学ぶこと
7月の二日間、一座の総会とあわせて富山の能作さん本社工場を訪ねた初日。
同社は1916年創業。
もともとは青銅や真鍮を用いた仏具や茶道具、花器を手掛ける鋳物メーカーとして、地域の伝統産業をになってきました。近年では風鈴などのインテリア雑貨、テーブルウェア、照明器具、オブジェなどのさまざまな自社商品を展開されています。融点が低く、柔らかいという錫の特性を活かした自由に曲げて使える「錫100%」のうつわなど、既成概念にとらわれない商品を多く生み出しています。
能作さんのものづくり、そして今回の社屋建設プロジェクトに深く関わっている小泉さんとのつながりから、能作さんの本社で特別に会場をお貸しいただけることに。
総会に先立って、高岡の地で能作さんがどのように鋳物のものづくりをされてきたのかを視察します。
能作さんのこれまでの取り組みや本社工場内のご案内をしてくださった能作千春さん。
能作社長の娘さんであり、同社の取り組みを多くの方に伝え「産業観光」の先頭に立たれています。
総勢50名を超える一座のメンバーが二班に分かれて、工場視察へ。
能作の製品がうまれる現場
まずはじめに入ったのは鋳造の現場。
広く開放的な加工スペース!天井の高さや明るい空間に驚きます。
広いスペースのあちこちで製造担当の皆さんがそれぞれの仕事に真剣に取り組んでいました。
製品の「型」を専用のケースに砂とともに詰めていく工程。
丁寧に型を入れていくこの繊細な作業があってこそ、そこに流し込まれる溶けた錫がきちんと形づくられていく。
金属を溶かす炉の近くでの仕事に取り組む男性。
「彼のいるところがこの工場の中で一番熱い場所です」
と能作千春さん。
型に流し込んで一定の温度に下がってから金物を取り出す工程。
使用された砂は床に設けられたグレーチング(網目状の部分)から回収される仕組みになっているようでした。
これからの100年を見据えた現場づくり
能作さんの製造現場を見ながら、小泉さんから現場の空間づくりについても解説をいただきました。
小泉さん
「製造の現場を新しくつくるにあたって、職人の皆さんが働きやすい環境づくりを目指しています。作業時の動線の良さだけでなく、皆さんの頭上にある照明には、LEDのライン状の照明を設置することで空間全体が明るくなり、作業性も向上します。また、作業内容にあわせてサインを計画し、訪れた来場者に仕事の内容を伝える工夫もこらしているんです」
日本全国で地方創生が進められる中、能作が取り組む「産業観光」。
放っておくと廃れていってしまう伝統産業を革新し続け、鋳物づくりや職人技を多くの人に伝えること。そして高岡市や富山県の観光のハブとしてこの本社工場を機能させていくことを目指している同社だからこその現場づくり。
信念と覚悟を持って自社の取り組みを公開されているのだと感じました。
能作本社工場のそこここに設けられたサイン。
漢字一字を立体的に金物で形づくられた印象的なデザインは、グラフィックデザイナーの水野佳史さんによるもの。今回のサイン計画は第51回日本サインデザイン賞の大賞・経済産業大臣賞を受賞されています。
鋳造の現場で型を用いて製品のベースがかたちづくられ、仕分けをされた後、いよいよ磨きの工程へと進んでいきます。
(続きます)
文責 わざわ座事務局