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高岡、能作本社を訪ねて(1)
2017.08.12

わざわ座の「大工の手」活動が全国ではじまって三年目。 今年の総会は富山・石川を訪ねての7月半ばの二日間での開催となりました。 全国各地から、座衆工務店の皆さんと、今年は小泉さんと一緒にものづくりをされている 家具メーカーさんや家具や生活道具のお店の皆さんも加わってくださいました。 そしてもちろん、家具デザイナーの小泉誠さんと建築家の伊礼智さん、新建新聞社の三浦さんも富山に駆けつけてくださいました。

高岡の「産業観光」に挑む能作本社工場へ

一日目、早朝の北陸新幹線に乗車して、富山県の「新高岡駅」で下車。駅から車で15分ほどで高岡市の「能作」本社工場に到着しました。

 

富山は高岡の伝統産業である鋳物の魅力を高めるために、仏具や茶道具など銅製品が主流だったところから錫(すず)100%の器や風鈴など生活道具を開発し、家具デザイナーの小泉さんをはじめとするクリエイターとの協働を重ねながら地域発から世界を視野に、ものづくりに取り組まれています。

 

この春に完成したばかりの社屋・工場は、製品だけでなくそれが生まれる現場を見せる「産業観光」によって地域の魅力を伝えています。 同施設は、優れた商業施設を顕彰する「JCDデザインアワード」のBest100にも選出されています。 伝統産業である鋳物を国内だけでなく世界に発信しようと挑む同社の舞台でもあります。

 

エントランスを入ったところに展示されている金物の「木型」実際に職人さんが今でも使っているものを展示しています。

色が異なるのは、木型によって関わる業者が異なるためだそう。実際に使っている道具がそのまましつらえになる。とても迫力がある場となっていました。

 

 

エントランスには日本地図が真鍮で型どられていました。 その向こうには富山のかたちをした台があり、プロジェクトマッピングで映像が投影されています。

店内にはショップコーナーや体験ワークショップをできるスペースだけでなく、同社の錫製品である食器を実際に使えるカフェ、そしてギャラリーコーナーもあります。

伝統とは革新の連続

 

 

こちらがギャラリー「NOUSAKU CUBE」。

 

なんと壁に用いられているのは錫のタイル。

これまで食器や小物に用いてきた錫、建材としても活用できるように……という同社の新しい挑戦でもあるのだそう。錫の壁、これまで見たことがありませんでしたが、錫本来の色合いや風合いがあり、きらびやかな感じは全くなく、とても美しい仕上がりでした。

 

NOUSAKU CUBEで展示されていたのは「能作ができるまで」展。

この本社工場の建設プロジェクトがはじまってからの経緯や実際に検討をされた模型や図面、現場確認の際の写真や素材サンプルが惜しげも無く展示されていました。

 

 

壁に掲示されていた能作社長の言葉。

「伝統とは革新の連続」という言葉に、高岡のものづくりを見直し、100年後の伝統を目指してきた強い想いが込められています。

 

 

 

社屋建築にあたって新たに開発された金物の取手もスケッチやサンプルとともに展示されています。原寸図面にこだわり、試作検討を繰り返す小泉さんのこだわりが伝わってきます。

地域に根ざし、地域の魅力を伝えること

エントランスのところに戻ると、ハガキサイズの紙に地域のお店や工房、出かけたくなるスポットが紹介されたカードが並ぶコーナー「TOYAMA DOORS」がありました。

このカードは同社のスタッフの皆さんが地域を歩いて、能作社屋に訪れてくださったお客様に「ここはぜひご紹介したい」と感じる地域の魅力的な場所を紹介するコーナーなのだそう。

地域に根ざしたものづくりに取り組みながら、その地域を知り、さらに伝えていく。

「つくることだけでなく、伝えることにも信念を持つ」こと。

 

わざわ座のものづくりも、そう在りたいーー。

そう強く感じる素敵な取り組みでした。

 

写真はとかした錫を成形した後で金箔仕上げをほどこされたうつわ。

錫は鉄や銅と比べても熱伝導率がよく、あらかじめ冷やしておいてお酒を楽しんだり、うつくしい酒器や食器を使うだけで食卓の雰囲気ががらりと魅力的に変わりそうです。

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到着して荷物を置いて早々に、同社の製品が生まれる場を見学する視察ツアーがはじまりました。

(続きます)

 

 

文責 わざわ座事務局